【京都大学iPS細胞研究所、iPS細胞研究を加速させるために外部連携を推し進める】

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小間番号: B-10

京都大学iPS細胞研究所(以下「CiRA」)は、iPS細胞を主なツールとして、新たな生命科学の分野を切り拓く基礎研究や創薬研究、再生医療の臨床応用に向けた研究および臨床応用の支援を行っている。
今回のBioJapanでは、京都大学医学部附属病院臨床研究総合センターおよびiPSアカデミアジャパン株式会社と共同出展する。前者は、新たな医療開発および臨床試験等に関する研究・開発、医薬品等の治験・臨床試験ならびに臨床データの収集・解析に関する事業等を行なっている。後者は、共同研究に必要なiPS細胞関連特許に関するライセンス導入・導出を実施している。
iPS細胞の医療応用には産学連携が不可欠と考えており、革新的治療法開発のための研究・事業開発に挑戦するパートナーを国内外から募集する。

iPS細胞を活用した治験が次々と進行中

iPS 細胞を使う再生医療では、iPS細胞がもつ多分化能を利用して様々な細胞を作り出し、病気・怪我などによって失われた組織・臓器の機能を回復させることを目的にしている。2018年8月には、京都大学医学部附属病院臨床研究総合センターの協力のもと、「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験」を開始した。この治験では、後述する再生医療用 iPS 細胞ストック・プロジェクトから提供された iPS細胞を用いる他家移植が行われる。目的は、iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞をパーキンソン病患者に移植したときの安全性と有効性、さらに免疫抑制剤であるタクロリムスを使用したときの安全性と有効性を評価することだ。同年10月には移植の1例目が行われ、観察期間は移植後2年間。治験の実施予定人数は7人としている。
iPS細胞の活用法は、再生医療だけではない。遺伝性疾患を有する患者由来のiPS細胞を用いて病態を再現し、その病態に有効な治療薬の候補を探索する薬剤スクリーニングにも使われる。その一例が筋萎縮性側索硬化症(ALS)だ。2017年、SOD1遺伝子に変異を有する家族性ALS患者由来のiPS細胞から運動ニューロンを作製して化合物スクリーニングを行なった結果、ALS運動ニューロンの細胞死を抑える化合物の中に既存薬ボスチニブがあると判明した。ボスチニブは、すでに慢性骨髄性白血病の治療薬として用いられているが、ALSにおいても有効である可能性が示された。
そして2019年3月には、治験の第1相試験が開始された。目標症例数を24例として、ALS 患者におけるボスチニブの安全性および忍容性の評価を進めている。

他家移植用iPS細胞ストックを充実させる

「再生医療用iPS細胞ストック・プロジェクト」は、他家移植のためのiPS細胞を保存し、必要に応じて提供できる体制を構築するものである。まず、ヒト白血球型抗原(HLA)型に関して免疫拒絶反応が起きにくい組み合わせでもつ健康なボランティアから細胞を採取し、医療用のiPS細胞を作製する。あらかじめ安全性や品質が確認されたiPS細胞を保存し、 2015年より医療機関や研究機関、製薬企業などへの提供を開始した。再生医療用iPS細胞ストックは自家移植と比べ、時間も費用も格段に抑えられると期待されている。現在では HLAの組み合わせとして、日本人の約40%をカバーできるほどの種類が用意されている。これらiPS細胞の作製、保存は、CiRAに設置された細胞調製施設(FiT:Facility for iPS Cell Therapy)で行われている。
前述したパーキンソン病患者に移植されるドパミン神経前駆細胞は、このプロジェクトから提供されたiPS細胞に由来する。また、理化学研究所や神戸アイセンター病院などが連携して実施された「滲出型加齢黄斑変性に対する他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞懸濁液移植に関する臨床研究」においても同様だ。後者の臨床研究では5例が実施され、移植後1 年間の経過観察において安全性が確認された。

技術開発や応用展開に向けて外部連携を推し進めたい

iPS細胞のさらなる活用には外部連携が不可欠であるとCiRAは考えている。例えば、今後 iPS細胞を用いた再生医療が普及するためには、品質が保証されたiPS細胞の安定的な製造が必要であり、そのためには、iPS細胞を培養するための基盤技術の構築が欠かせない。また、すでにいくつかの疾患に対してiPS細胞を用いた臨床研究や治験が実施されているが、さらに幅広い希少疾患や難病への新しい治療アプローチとしてiPS細胞の活用が見込まれている。
こうした技術開発や応用展開は、外部との連携によりブレークスルーが生まれるものが多い。今回のBioJapanでは、国内外のアカデミアや企業と交流し、ともにiPS細胞を用いた基礎研究や臨床応用を実現するための、積極的なパートナー探しを行いたいとのこと。

出展ブースや初日のオープンステージでのプレゼンテーションでは、CiRAによるiPS細胞の医療応用への戦略的な推進分野等の紹介のほか、iPSアカデミアジャパン株式会社と京都大学医学部附属病院臨床研究総合センターの取り組みを紹介する。

(取材・文:GH株式会社 島田)