【セルメディシン、悪性度グレード4の脳腫瘍に対する自家がんワクチンの治験フェーズIIIを実施中】

小間番号: C-39

オプジーボ(一般名:ニボルマブ)のように、免疫を活用する新たながん治療アプローチが注目されている。このような治療法は「がん免疫療法」と呼ばれる。理化学研究所・筑波大学発スタートアップ企業のセルメディシンは、がん免疫療法の中でも「自家がんワクチン」の開発に取り組むベンチャー企業だ。BioJapanでは、現在の臨床試験の結果を紹介し、治験成功後の提携企業の探索を行う。

手術で取り出したがん組織をワクチンとして使う

自家がんワクチン療法とは、患者自身のがん組織をワクチンとして注射し、免疫細胞が異物として認識することで、体内にあるがんに対し免疫細胞が攻撃できるようにする治療法である。

がんと一口に言っても、患者によって特徴が異なる。免疫細胞は、細胞の表面にある物質を目印に異物かどうか判断するが、がん細胞は免疫の異物認識システムを巧みに回避して、免疫細胞から攻撃されないようにしている。
一方、予防接種などで使われるワクチンとは、無毒化あるいは弱毒化した病原体のことだ。これを注射して免疫細胞に異物であることを認識させることで、本物の病原体が進入してきたときに素早く対処できるようになる。

セルメディシンでは独自技術として、外科手術で取り出してホルマリン固定した患者本人のがん組織をワクチンとして使う。ホルマリン固定したがん細胞は死んでいるため増殖することがなく、ワクチンとして製造する際にホルマリンは十分に洗浄除去される。

このがん組織と免疫刺激剤を同時に注射すると、免疫細胞ががん細胞を異物と認識できるようになる。その作用によって、手術では取りきれなかった体内の残存がん細胞を免疫細胞が攻撃できるようになる。つまり、自家がんワクチン療法とは、がんの外科手術後の転移・再発防止のためにあるのだ。

膠芽腫への自家がんワクチン評価は治験中

すでに様々な医療機関と連携して臨床試験が実施されている。がん種は、肺がん、胃がん、肝臓がん、大腸がん、腎臓がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、子宮がんなど、多岐にわたる。その中で現在セルメディシンが最も力を入れているのが、脳腫瘍の一種である「膠芽腫」だ。

膠芽腫は、脳腫瘍の中でも悪性度が最も高いグレード4に分類され、発症すると3年後の生存率は20〜30%、5年後生存率は10%と、生存率が非常に低いのが特徴。脳神経外科専門医が「最悪中の最悪」と表現するように、難治性がんの一つとして知られている。周囲に浸潤しやすく、脳という場所もあって手術で全部取り切るのが難しいのも再発しやすい要因だ。

これに挑戦しているのが、セルメディシンの自家がんワクチンである。手術で摘出した患者の脳腫瘍の組織に独自の免疫刺激剤を添加し、ワクチン「Cellm-001」として患者に注射する。

臨床試験のフェーズI/IIaの結果はすでに論文として発表されている(Ishikawa E, et. al. J Neurosurg. 2014;121(3):543-553.)。この試験では、膠芽腫の標準治療である「外科手術+放射線療法+抗がん剤(テモダール)」の全生存期間の中央値が14.6カ月だったのに対して、自家がんワクチンCellm-001を上乗せすると22.2カ月まで延長した。3年生存率についても、標準治療が20%だったのに対して、自家がんワクチン投与群では38%と大幅に改善した。

フェーズIIbも解析が終了しており、事前に解析を計画していたサブグループ群について、標準治療群13名と自家がんワクチン群11名で比較したところ、有意差は認められなかったものの、無増悪生存期間と全生存期間が延長する強い傾向にあった。

現在は医師主導治験の多施設二重盲検ランダム化比較試験であるフェーズIIIに入っている。日本医療研究開発機構(AMED)から試験のための資金を獲得しており、東京女子医科大学教授の村垣善浩氏を研究実施責任者として、国内11大学の脳神経外科で実施される。予定では112名の患者をリクルートするという。

治験成功後に提携するパートナーを探索中

大野氏は、「膠芽腫は患者数が少なく、治療法を開発する社会的な意義は大きいと考えています。治験でよい結果が得られたときには多くの患者に届けられるよう、協力してくれる企業を探しています。BioJapanではこれまでの取り組みなどを紹介するので、ぜひブースC-39に来ていただきたいと思います。」と呼びかける。

取材・文:GH株式会社 島田