【中外製薬、Dxによる革新的な新薬創出を目指す】

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中外製薬は2020年3月に、デジタルトランスフォーメーション(Dx)推進に向けて「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を発表した。2030年の目指す姿として、「デジタル技術によって中外製薬のビジネスを革新し、社会を変えるヘルスケアソリューションを提供するトップイノベーターとなる」ことを掲げている。CHUGAI DIGITAL VISION 2030は、「デジタル基盤の強化」、「すべてのバリューチェーン最適化」、「デジタルを活用した革新的な新薬創出(DxD3)」の3つの基本戦略から構成され、BioJapanでは特に「デジタルを活用した革新的な新薬創出」についてスポンサーセミナーやブースで紹介する。

デジタルを活用した革新的な新薬創出

「デジタルを活用した革新的な新薬創出」は、「AIを活用した創薬」、「デジタルバイオマーカーへの取り組み」、「リアルワールドデータの利活用」の3テーマが含まれる。

「AIを活用した創薬」

中外製薬は抗体エンジニアリング技術以外にも抗体作製技術に強みをもっており、リード抗体を取得するプロセスにおいてAIを活用している。同社では確立したAI技術を、機械学習(Machine Learning)と抗体(Antibody)の英単語を組み合わせて「MALEXA」とよんでいる。具体的には、標的分子に結合するリード抗体の取得、その抗体の最適化においてMALEXAを適用し、抗体作製プロセスを効率化している。

また、デジタルパソロジーを中心とした画像解析、テキストマイニング技術による論文検索システムにもAIを活用する。後者については、FRONTEO社と協働してAIによる論文探索システムや疾患関連情報の検索システムを構築し、キーワードや文章に関連する論文や疾患関連情報を効果的に抽出することにより、新たな仮説やアイデアを効果的に導きだすことにより新薬創出につなげる。

「デジタルバイオマーカーへの取り組み」

ウェアラブルデバイスを活用し、患者アウトカムの可視化を目指す。例えば、アトピー性皮膚炎を対象に抗体医薬品ネモリズマブを投与したとき、痒みによる睡眠障害の改善を測定し、第II相試験の結果として既に報告している。他にも、米国Biofourmis社との共同開発のもと、バイオセンサーとAIベースのアルゴリズムを利用し、子宮内膜症の痛みの定量化を目指す。また、血友病Aの治療薬の一つであるヘムライブラ使用時における運動と出血の関係についても、ウェアラブルデバイスを用いて運動時の身体データの収集・解析を計画している。

「リアルワールドデータの活用」

昨今、創薬の革新的な開発プロセスとして電子カルテデータ、検診データ、ウェアラブルデバイスから得られるデータなど、臨床試験以外で得られる患者・医療行為の情報活用が重要になってきている。 「承認申請戦略の拡大」、「開発プロセスの高度化・効率化」、「承認後実臨床における価値証明」、「疾患理解の深化」の場面においてリアルワールドデータを活用していくという。

デジタル基盤の強化

上記の「デジタルを活用した革新的な新薬創出」を実現していくためには、デジタル基盤の強化が必要となる。デジタル基盤は、CHUGAI DIGITAL VISION 2030では土台という位置づけであり、すでにデータ利活用基盤「CSI(Chugai Scientific Infrastructure)」を構築した。 CSIは、大容量データをセキュアにアクセス、移動、保管できるクラウド基盤であり、アマゾンウェブサービス(AWS)を利用して構築した。これにより、社内データの部門横断的活用や、ゲノムデータなど高いセキュリティが要求されるデータの安全な取り扱いが可能となった。

また、大容量データを扱えることで、アカデミアや医療機関、パートナー企業といった社外との共同研究プロジェクトを100以上同時に推進できる研究環境を実現している。共同研究に必要なITリソースの調達期間を6か月から2週間に短縮し、導入コストは従来と比べ90%削減。これは共同研究を検討しているパートナーにとっても魅力的だろう。
中外製薬は、こうしたDxの取り組みは、デジタルの領域でトップを走るロシュ・グループと連携しながら、真の個別化医療の実現を目指して行く。さらに、データサイエンティストやデータエンジニアを始めとしたデジタル人財の採用や育成を積極的に進めると共に、社員の自由な発想やチャレンジを形にする仕組みを設け、新しい価値創出の基盤を確立していく。

オープンイノベーションの場へ

BioJapanでは、スポンサーセミナーおよびブースで、CHUGAI DIGITAL VISION 2030の詳細を紹介する。ブースではさらに、中外製薬が強みとしている抗体エンジニアリング技術についても展示される。

ブースでは6角形の展示面を用意し、自然・デジタル・バイオが融合した空間を演出しつつも感染症拡大防止対策も考慮したブース設計となっている。会期中は来場者と気軽にディスカッションを行い、アイデアを自由に交換できるオープンイノベーションの場になるだろう。

取材・文:GH株式会社 島田