【ヘリオス、独自のiPS細胞プラットフォームで再生医療を推進させる】

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ヘリオスは2011年に設立されたバイオベンチャーだ。「『生きる』を増やす。爆発的に。」をミッションに掲げ、再生医療を推進することで新たに救える命を増やす。特に、アンメットメディカルニーズに対してiPS細胞を活用することを将来的な目標としている。再生医療JAPANでは、iPS細胞作製事業、iPS細胞を用いた再生医療事業、そして米企業とライセンス契約して開発を進めている体性幹細胞再生医薬品の取り組みについて紹介する。

免疫拒絶反応を抑えたiPS細胞プラットフォーム

ヘリオスが将来的に構築しようとしているのが、iPS細胞プラットフォームである。独自に免疫拒絶を抑えたiPS細胞を作製し、最終的には臨床株として細胞提供を目指すというものだ。

現在臨床で使用されているiPS細胞は、自家または他家移植として使用されている。しかし自家移植はコスト負担が大きく、他家移植は患者本人と免疫型が完全に一致せずに拒絶反応が起きるため、免疫抑制剤を必要とする。

そこでヘリオスが開発しているのが、拒絶反応を抑えた他家iPS細胞「ユニバーサルドナー細胞(Universal Donor Cell)」である。これは、遺伝子編集技術により、免疫に関係するHLAをノックアウトし、さらに免疫抑制関連分子や安全性装置として自殺遺伝子を追加するなど、独自に遺伝子編集を加えた安全かつ汎用性の高い幹細胞だ。通常の他家iPS細胞のようにコストを抑え、機能性が高いことが特徴となっている。現在は研究株が完成しており、臨床株の完成に向けて取り組んでいるところだ。

共同開発パートナーとともに進める再生医療

iPS細胞を用いる再生医療も、共同研究を行っている。

その一つが、国立がん研究センターと固形がんを対象に行っている共同研究である。これは、iPS細胞に遺伝子編集を施し、拒絶反応を抑え、かつ免疫機能を高めたNK細胞(免疫細胞の一種)に分化させることで、遺伝子編集NK細胞や、NK細胞によって活性化された患者の免疫細胞ががん細胞を認識して攻撃できるようにするというものだ。具体的には、がん細胞認識能力、抗体併用による機能強化能力、がん細胞への遊走能力、他の免疫細胞を呼び込み活性化させる能力、投与細胞自身の活性化・生存維持能力、長期間留まるステルス化能力に秀でているNK細胞を作製中だという。特定のがん抗原に限定されず、幅広い固形がん疾患への効果が期待されている。

また、滲出型加齢黄斑変性の治療として、理化学研究所より独占的ライセンスを受け、iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞を移植する方法も開発している。こちらは大日本住友製薬株式会社と共同開発をしている。

そして、横浜市立大学と共同研究を進めているのは、肝疾患に対する3次元臓器である。iPS細胞から血管内皮細胞、肝臓細胞、間葉系幹細胞に分化させてから混合培養することで、血管構造をもつ立体的な肝臓原器を作製するというもの。肝臓以外にも様々な臓器移植の代替法となる可能性を秘めている。

固形がん、滲出型加齢黄斑変性、肝疾患いずれも現在は前臨床試験の段階だが、ヘリオスでは他の疾患治療も含め、様々な企業やアカデミアとのパートナリングも念頭におきながら開発戦略を進めている。ヘリオスの強みは、iPS細胞に対する遺伝子編集技術を約10年間研究してきた中で培ってきた技術力であり、そう簡単に他社が追随できるものではないと、担当者は自信を見せる。

体性幹細胞の治験とiPS細胞プラットフォームによるハイブリッド戦略

iPS細胞事業だけではなく、体性幹細胞による細胞治療の開発事業をも行う。米国のバイオベンチャーであるアサシス社とライセンス契約を締結し、ヒト骨髄由来の体性幹細胞製品MultiStem®の治験を進めている。MultiStemは点滴による静脈投与という、従来の医薬品に似ているもので、治療対象は脳梗塞急性期と急性呼吸窮迫症候群(ARDS)だ。
脳梗塞急性期の患者に対してMultiStemを投与すると、膵臓からの炎症性細胞の動員・放出を抑制し、脳内の虚血部位における神経細胞障害(2次障害)を軽減できる。現在はプラセボ対照二重盲検第II/III相試験を実施中であり、年内には症例を組み入れ完了予定だ。

ARDSに対しては、肺炎を原因疾患とするものに対して非盲検の第II相試験を実施しており、こちらも年内には30症例が組み入れ完了予定。また、追加試験として新型コロナウイルス感染症(COVID-19)肺炎由来のARDSについても、安全性評価のための5症例の組み入れを8月に完了している。

こうしたMultiStemの実績を積み重ねて会社を成長させ、そこから得た利益をiPS細胞プラットフォームに投資する「ハイブリッド戦略」で、再生医療の推進を目指す。

取材・文:GH株式会社 島田