【花王、生物科学研究に基づくシーズを公開しオープンイノベーションを目指す】

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花王は2019年4月にESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を発表した。これは、気候変動や海洋プラスチック問題などの社会的課題に向き合いながら、持続可能な暮らしをしていく生活様式「Kirei Lifestyle」を実現するための戦略である。「Kirei Lifestyle」の実現には、これまでに開発してきた技術を自社製品だけでなく、Society 5.0を見据えたオープンイノベーションを通して、他社と協業することも重要だと花王は考える。BioJapanでは、生物科学研究に基づくシーズを紹介し、多様な分野への応用や実装化、社会課題の解決やビジネス構築に向けて伴走するパートナーとの出会いを模索する。

洗剤用酵素から機能性タンパク質の開発へ

花王が得意とする技術の一つに、バイオによるモノづくりがある。「アタック」ブランドに代表されるように衣料用洗剤で存在感を示しているが、実は洗剤用酵素を独自開発・自製しているのは大手洗剤メーカーで花王のみ。そのため、タンパク質工学による酵素改変技術を得意としており、酵素活性向上、安定性向上、洗浄至適pH改変、生産性向上等を行い、酵素の高活性と高安定性を両立させてきた。その技術力は洗剤用酵素に限らず、機能性タンパク質というカテゴリーの拡大につながっている。

こうした研究開発の中から見出したのが、グリシン鎖特異的プロテアーゼβ-lytic protease(BLP)である。BLPは、グリシンリッチ配列を特異的に切断するタンパク質分解酵素で、黄色ブドウ球菌などに対して溶菌・殺菌活性を有する。これまでBLPの異種発現(本来とは異なる生物の中でタンパク質を合成すること)の成功例はなく、天然のBLP産生菌を培養するしか方法がなかったため高コストであった。花王では、枯草菌を扱う技術を活用することで、世界で初めてBLPの異種発現に成功した(特許出願中)。

BLPは黄色ブドウ球菌に対する抗菌剤としての応用が期待されているだけでなく、グリシンリッチ配列切断の特異性から、皮革の面積拡張用処理剤としての用途を見いだしている。他にも、ケラチンを高分子のまま可溶化できることがわかっており、化粧品や繊維などに活用できることが期待される。花王はこうしたグリシン鎖特異的切断能をもつBLPの共同研究・共同事業開発のパートナーを募集している。

次世代の藻類の産業化に向けた開発研究・技術応用

バイオ産業として現在注目されているのが藻類である。サプリメントや水産飼料、色素としてすでに産業利用されており、最近では特に油脂生産性が注目されている。ただし、天然の藻類では産業利用で必要な効率性に届かないため、より高い生産能をもつ個体をスクリーニングして大量培養する必要がある。

花王では、遺伝子組換えに該当しない「セルフクローニング」という技術を用いて、微細藻類ナンノクロロプシス属(Nannochloropsis)の改変に取り組んでいる。セルフクローニングとは、同じ属の中の個体から遺伝子を取り出して導入する方法であり、ここに花王は強みがある。すでに、油脂代謝改変により特定の種類の油脂を大量に生産できる株の作成に成功しており、例えば、エイコサペンタエン酸(EPA)増産株や、細胞壁を弱くして油脂抽出効率を改善した株などがある。他にも、消化酵素に分解されやすい株もあり、易消化性サプリメントや水産飼料という新しいコンセプトも誕生している。

こうした独自藻類株を実用化検討・培養生産技術に関心をもつパートナーを探索する。また、藻類改変技術そのものや、次世代の藻類産業化に向けた開発研究に興味のある来場者も歓迎するという。

医薬品候補から食品、農業まで幅広いシーズ

BLPと藻類改変技術以外にも様々なシーズを花王は持っている。社内ライブラリーから発見された新規エストロゲン受容体β選択的アゴニストは、動物試験においてホットフラッシュや前立腺肥大を抑制するなど既存の医薬品と同等レベルの薬効でありながら、乳がんリスクを低減すると考えられる。また、認知機能や高脂血症改善、心筋症改善が期待されている柑橘系ポリメトキシフラボン「ノビレチン」は、難水溶性と低吸収性が課題であるが、溶解挙動改善によって高い吸収性をもたせることに成功した。

他にも、カットレタスの褐変を防止するクミン由来の素材「クミンアルデヒド」や、農作物の葉の成分情報から数カ月後の収量を予測できるシステムなども紹介される。

加工用製剤から医薬品、食品、農業まで、非常に幅広い応用が考えられるシーズが多数紹介されるので、活用や共同開発を検討しながらぜひご覧いただきたい。

取材・文:GH株式会社 島田