【慶應義塾大学、新たなデータベース構築で産学連携の促進を目指す】

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BioJapan 2020にて、アカデミアとして広くブース展開する慶應義塾大学。「大学が有する技術の社会実装を推進したい」と考え、医学部の早期研究シーズをノンコン(非秘密)情報で幅広く紹介するデータベースを、2021年4月より稼働予定だ。BioJapanでは、このデータベースの紹介だけでなく、臨床研究推進センターが管理する橋渡しシーズ、および慶應義塾大学単独で特許出願した技術を紹介する。

ブラウザから利用できるデータベースでシーズを探しやすく

産学連携は新たな技術開発に欠かせない。アカデミアは、学部で研究中の高度でオリジナリティの高い技術や知識を事業として展開したいと考えているが、企業も革新的な製品やサービスを開発する上で最先端の学術研究の成果を取り入れたい。

しかし、産学連携がそう簡単なことではないことは、アカデミア・企業双方の共通認識だろう。アカデミアの研究者は、特に若手ほど企業との人脈が少なく、自身の研究成果をアピールする機会に恵まれていない。一方、領域を広げたい製薬企業や、医療分野に参入したい異業種にしても、そもそもどういう研究分野があり、どのように情報収集をすればいいのか悩んでいることは珍しくない。お互いにつながりを持ちたいのに、その機会をなかなか得られない課題がある。

その課題を解決するため、今回、慶應義塾大学が新たに開発しているのが「産学連携用研究シーズ公開データベース」だ。登録ユーザーに有料で公開され、ブラウザでノンコンシーズを検索・ソートできる。同大医学部がもつシーズ(新規アイデアや医薬品シーズ)だけでなく、日本医療研究開発機構(AMED)革新的医療技術創出拠点プロジェクトの橋渡し研究支援拠点として、拠点内外のシーズ(新規低分子医薬品やバイオ医薬品・遺伝子治療など)も登録される。シーズ探索からヒット探索のステージを主に、100のシーズが登録予定だ。
また、データベースを公開するだけでなく、産学連携担当者が研究者と企業との面談をセッティングし、最終的な共同研究の契約締結までをサポートする。

データベースは現在準備中で、本稼働は2021年4月を予定。現在は医学部のシーズのみだが、近いうちに理工学部や薬学部のシーズも登録したいという。BioJapanのブースでは、データベースの概要や開発中画面を紹介する予定だ。

リスト化された橋渡し研究支援拠点の研究シーズ

データベースとは別に、慶應橋渡し研究支援拠点の研究シーズも合わせて当日は紹介する予定。慶應拠点では約180のシーズ開発を支援しており、そのうち約90のシーズを、企業とのマッチングを希望するシーズリストとして整備した。データベース構築後は橋渡し研究シーズもデータベースに登録される予定としている。

シーズは H, A, B, C の4種類がある。シーズAは関連特許出願を目指す基礎研究課題、シーズBは非臨床POC取得および治験届出を目指すもの、シーズCは治験または高度・先進医療等を実施して臨床POC取得を目指すものである。これに加えて、医歯薬系所属以外の研究者により創出された画期的な先端技術・知識を用いた基礎研究であって、新たな医療技術・治療の提案が出来る可能性を有するものを異分野融合型シーズ(シーズH)として支援を行っている。基礎から非臨床、臨床と幅広いラインナップを用意し、企業の様々な要望に応える体制となっている。

当日のブースではシーズリストを掲示し、興味があるシーズについてはノンコン資料を提供する。また、さらに詳細な情報のリクエストがあった場合には、面談を実施しアカデミアと企業の両者がwin-winとなるようなマッチングを目指す。

単独で特許出願した技術も紹介

さらに、慶應義塾大学単独またはアカデミアと共同で特許出願済みの技術についても、ポスター紹介する。これらはまだ臨床に全く至っていないものの、ライセンスアウトを介して社会実装したいと考えている。

例えば、途切れた神経回路をつなぐ人工シナプスコネクターがある。これを小脳失調、アルツハイマー病、脊髄損傷のモデルマウスに投与すると、神経回路がつながりシナプスが形成され、病態の改善に成功したという(Suzuki K, et al. Science. 2020;369(6507):eabb4853. )。また、有効な治療薬がほとんどない糖尿病性腎臓病に対する治療ワクチンも紹介する。

医薬品候補だけでなく、素材の紹介もある。絶縁体であるダイヤモンドにホウ素をドーピングしたダイヤモンド電極は、高い安定性と耐久性を有しながら化学電極としての性質を持つ。環境改善や医療(ウイルス検査など)を含む様々な応用用途に利用できると期待される。

こうした多くのシーズ紹介を通じて企業とコミュニケーションを行い、アカデミアが持つシーズの社会実装を推進していく。企業にとっても、様々なシーズの情報を効率的に集めるためのよい手段になりそうだ。

取材・文:GH株式会社 島田