【リプロセル、研究用iPS細胞に加え臨床用iPS細胞作製サービスを開始】

小間番号: R-11

リプロセルは、幹細胞研究で著名な京都大学名誉教授の中辻憲夫氏とスタンフォード大学教授・東京大学特任教授の中内啓光氏が2003年に設立。現在はiPS細胞による再生医療と創薬支援、そして試薬販売を主力事業としている。これまでの創薬支援向けの研究用iPS細胞に加え、2020年3月から再生医療事業のラインナップとして臨床用iPS細胞作製サービスも開始した。長年の幹細胞研究のノウハウを活用し、再生医療を手がける製薬企業などに提供する。

異常リスクが小さいRNAリプログラミングによるiPS細胞作製

リプロセルは、創業当初はES細胞用の培地試薬を扱っていたが、2007年にヒトiPS細胞の樹立が報告されて以降、研究用iPS細胞の培地試薬やiPS細胞樹立サービスの取り扱いを開始した。iPS細胞はアカデミアでの基礎研究だけでなく、製薬企業においても特定の細胞に分化させて創薬スクリーニングや薬効評価を行う際に用いることができる。

リプロセルのiPS細胞作製技術で特長としているのが、RNAリプログラミングを用いていること。iPS細胞の作製においては、ウイルスベクターやエピゾーマルベクターを用いる方法もあるが、これらは核ゲノムに組み込まれたり、長期にわたって残存したりする可能性があり、予期せぬゲノム変異や腫瘍形成のリスクがある。
RNAリプログラミングは、核ゲノムに組み込まれず、速やかに分解されやすいRNAを細胞に導入する方法であり、ゲノム変異や腫瘍形成のリスクは低いとされる。クローン間の差が少なく、安定した品質を確保しやすい利点もある。

iPS細胞作製サービスについては、顧客が患者から検体を採取して発送する以外にも、リプロセルグループで患者をリクルートして採取することができる。さらには、健常者iPS細胞にゲノム編集を行うことも可能だ。これらのiPS細胞から疾患モデル細胞を作製することで、疾患のメカニズム解明や創薬に活用できる。 それ以外にもiPS細胞だけでなく、がん組織等の生体試料の採取から新鮮なヒト組織アッセイなど、要望に応じた創薬支援サービスをも提供している。

商業利用可能な臨床用iPS細胞作製サービスを開始

上記の研究用iPS細胞に加え、2020年3月から臨床用iPS細胞の作製サービスも開始。

再生医療など臨床用となると、研究用以上の厳しい品質管理基準があり、各国・地域の規制対象となる。製薬企業にとっては、本邦だけでなく、アメリカを含めた世界で再生医療を普及させたいと考えているものの、各国・地域で規制の内容が異なるため、世界展開のハードルが高いという課題がある。

リプロセルは、日本、アメリカ、イギリスに研究開発拠点を有しており、各所に経験豊富な専門家が在籍しているため、日米欧の各規制に準じた臨床用iPS細胞をオーダーメイドで作製できる強みがある。現在は日本とアメリカの両方に対応しており、その後ヨーロッパにも展開する予定だ。リプロセル担当者は、「日本とアメリカどちらか一方に対応できる企業は多いが、2カ国の規制に対応できるところは当社ならではの強み」と強調する。

臨床用iPS細胞は、組織採取時に臨床応用および商業利用可能なインフォームドコンセントを取得しており、研究や臨床試験だけでなく、製造販売承認取得後の再生医療等製品としての製造にも使用できる。自社内で一貫して製造・管理するため、薬事申請に必要な必要書類を一元管理している強みもある。また、臨床用iPS細胞もRNAリプログラミングで作製するため、安全性のリスクを最小限に抑えることができる。

さらには、移植する目的の細胞(神経細胞や心筋細胞など)によって分化誘導条件や求められるiPS細胞株の仕様が異なるが、顧客が要望する用途に合わせてオーダーメイドで作製可能なこともポイントである。

リプロセル担当者は、「製薬企業やバイオベンチャーは、iPS細胞を用いる再生医療に注目しており、実際に患者に投与する分化済み細胞には関心が多く寄せられています。一方で、iPS細胞樹立そのものには長年のノウハウや技術が必要で、その点で当社の強みを活用してもらえると考えています。すでに複数の企業から相談を受けています」と、ニーズの高さを感じているようだ。

新型コロナウイルス用ワクチンの国際研究コンソーシアムにも参加

他にもリプロセルの再生医療事業では、体性幹細胞製品「ステムカイマル」の臨床試験と、iPS細胞由来グリア前駆細胞(iGRP)の研究開発を行っている。

ステムカイマルは台湾のSteminent Biotherapeutics社が開発したもので、脊髄小脳変性症を対象としている。日本ではリプロセルが独占的に臨床試験を行っており、現在はフェーズIIが実施中だ。

iGRPは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と横断性脊髄炎(TM)を対象に、アメリカのQ Therapeutics社と共同で臨床応用を目指している。

なお、リプロセルは、新型コロナウイルス用ワクチンの開発を目指すヨーロッパの国際研究コンソーシアムにも参加している。こちらの動向にも今後注目していきたい。

取材・文:GH株式会社 島田