【S’UIMIN、自宅で脳波を簡単に取得できる睡眠計測サービスを開始】

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睡眠に関わる問題をテクノロジーで解決する「スリープテック」。2017年10月に設立されたスタートアップ企業「S’UIMIN」は、スリープテックを前面に打ち出している。今年9月から、同社初となる睡眠計測サービス「InSomnograf®」の提供を開始した。自宅で脳波も計測できるデバイスを使うことで、これまでになく簡便で客観的に睡眠を評価できるため、睡眠状態を改善する製品・サービスの開発を考えている企業にとって心強いツールとなりそうだ。

世界的な睡眠研究者が創業した筑波大学発のスリープテック企業

S’UIMINは、筑波大学発のスタートアップ企業。取締役会長CSOは、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)機構長の柳沢正史氏が務める。

柳沢氏は、睡眠覚醒に関わる神経伝達物質「オレキシン」を発見するなど、睡眠研究の世界的な研究者である。柳沢氏が機構長を務めるWPI-IIISは、睡眠研究に特化した研究機関として、睡眠のメカニズム解明や睡眠障害の治療法開発への貢献を目指している。そのWPI-IIISが、「世界中の眠りに悩む人々への睡眠計測サービス」を事業化すべく設立したのがS’UIMINである。2018年には、スパークス・グループ株式会社が運営する「未来創生2号ファンド」から計7億円の資金調達を実施するなど、かねてより注目されてきたスリープテック企業だ。

現代社会において、睡眠の問題に悩まされている人は多く、特に日本では社会問題と考えてもよいだろう。代表取締役社長の藤原正明氏はこう話している。「日本人では睡眠不足が原因で、年間15兆円近くの経済損失が生じていると言われています。睡眠障害はうつ病や生活習慣病とも関わり、様々な健康に関わる原因でもあります」

睡眠の問題を解消するには、睡眠時間を確保するだけでなく、睡眠の質を上げることも重要だ。そこでS’UIMINが開発したのが、自宅で睡眠中の脳波を簡単に計測できるデバイスと、そのデバイスから得られるデータをAIで解析する睡眠計測サービス「InSomnograf®」である。

簡単なデバイスとAIで睡眠ステージを分析

睡眠の質は、脳波を計測することでわかるとされている。私たちが眠っているときには、球速眼球運動を伴うREM(レム)睡眠と、眠りの深さで3段階に区分されているnon-REM(ノンレム)睡眠で構成されている。一般的には、入眠から睡眠の前半はnon-REM3という深睡眠が多く出現し、起床に向けて睡眠は徐々に浅くなり、REM睡眠の割合が増える。この間、脳は覚醒時と比較して80%程度のエネルギーを消費しており、記憶や脳内の老廃物の除去など様々な役割を担っていることが最近の研究で明らかになりつつある。実際の睡眠検査では、エポックと呼ばれる30秒単位で細かい睡眠ステージに分けて評価する。

睡眠中の脳波を測る装置にはポリソムノグラフィ(PSG)というものが既にあるが、専門の研究機関や病院に泊まる必要がある。普段とは違う寝心地になるため、通常と同じ睡眠状態とは限らない。また、PSGの取り扱いと睡眠データの解析には、熟練の臨床検査技師が必要で、手間や費用がかかってしまう。

InSomnograf®は、PSGの課題についてハードとソフトの2つの観点からクリアした。ハード面からは、自宅で簡単に装着できるデバイスであること。このデバイスとPSGを同時に装着して数十人にテストしたところ、両方から得られた脳波の一致率は平均83%以上だったという。

ソフトの面では、脳波データをAIで解析するようにしたこと。筑波大学計算科学研究センターを共同開発し、深層学習などを用いることで、熟練の臨床検査技師との一致率は約80%となった。この数値は、一般の臨床検査技師と同等以上の成績であり、今後データが集まってさらに学習させることで精度がより上がると、藤原氏は自信を見せる。

検査結果は、わかりやすいレポートとしてまとめられ、被験者に提供される。健康診断のようにA〜E段階で睡眠を判定し、睡眠の改善に活用する、あるいは睡眠専門の病院を受診するきっかけにもできる。レポートには、睡眠時間だけでなく、いつ眠りに落ちたか、睡眠がどれくらい深かったか、睡眠リズムは規則正しかったかなど、詳細なデータも掲載される。さらに、睡眠の質や量に関わる睡眠変数を20以上抽出でき、研究開発にも活用できるデータを得ることも可能だ。

InSomnograf®では、デバイスをレンタルし、自宅で5~7晩連続で睡眠を計測する。デバイスが返却されてからレポートの提供までは3〜4日ほどだという。自宅で5~7晩連続で睡眠計測できるデバイス自体他になく、連日計測の中で個人差や晩ごとの睡眠の質の違いが予想以上に大きいことがわかってきた。将来的には医療機器としての利用も目指す。

睡眠関連プロダクトの開発や健康経営に活用

InSomnograf®は、まずはBtoBサービスとして企業や研究機関を対象に提供される。例えば、睡眠に関するサプリメントや機能性成分を研究開発している食品メーカー、ベッドやマットレスの機能を評価したい寝具メーカーなど睡眠時の環境に関わる製品を開発する企業が挙げられ、すでに多くの引き合いがあるという。

また、最近では「健康経営」という言葉があるように、経営者にとって従業員の健康管理が重視されており、その方面での活用も可能だ。睡眠不足は、気分障害や生活習慣病など様々な疾患と関係していることから、健康経営の重要な指標になり得る。睡眠は本人の認識と実態がかけ離れている誤認も多いが、InSomnograf®のレポートでは、非常に客観的なデータが得られるため、現状を正確に把握し、改善の方向性や他の従業員との比較をすることが可能であるという。

当日は、デバイスの展示やサービスの詳細な説明などを行い、アプローチが難しい睡眠という分野において、S’UIMINは新しいプレイヤーとなりそうだ。

取材・文:GH株式会社 島田