【セルシード、細胞シート再生医療製品の事業化を目指して】

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再生医療において、細胞を1枚のシート状にして患部に移植するための技術「細胞シート工学」が注目されている。セルシードは2001年の創業以降、細胞シート工学を用いた再生医療等製品の事業化を進めており、2019年中には食道再生上皮シートの承認取得を目指している。ブースでは、自社施設で行う再生医療受託サービスと、細胞シート工学を用いた温度によって細胞との接着度が変化する温度応答性細胞培養器材などを紹介する。

食道再生上皮シートの販売承認取得予定

▲軟骨再生シート

現在セルシードは食道再生上皮シートと軟骨再生シートの製品化を目指し、共同研究先と共に治験や臨床研究を進めている。

食道再生上皮シートは2017年2月に厚生労働省より再生医療等製品の「先駆け審査指定制度」の対象品目指定を受け、2019年中の承認取得を想定している。使用用途は、食道がんの手術による合併症予防である。食道がんは近年ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)と呼ばれる内視鏡手術によって切除することが増えているが、治癒に伴って食道狭窄を起こすことがある。食道狭窄予防のため、手術前に口腔粘膜組織を採取して作製した細胞シートをESDによる病変部切除後に貼り付け、治癒を促進させるのがコンセプトだ。食道再生上皮シートを用いた臨床研究は2008年から2014年にかけて東京女子医科大学、長崎大、スウェーデンのカロリンスカ大学病院で合計30症例が行われた。成績は良好であったことから2016年に治験を開始。また、欧州においても欧州医薬品庁(EMA)とコンタクトを取りながら治験の準備を進めている。

軟骨再生シートは変形性膝関節症をターゲットに、東海大学と共同研究を進めている。東海大学では2011年から3年間にわたり自己細胞による臨床研究として8例が行われ、安全性および良好な治療効果が確認された。現在、東海大学が先進医療を申請予定であり、セルシードはその細胞シートの受託加工を請け負う一方、先進医療の結果を踏まえて企業としても治験の実施を目指している。また、同種(他家)細胞シートの移植手術も2017年から実施され、臨床研究として10名の患者に移植予定である。同種細胞シートは多指症の手術で廃棄される組織から取りだした軟骨細胞から製造され、今後セルシードで治験、及び承認申請を行う予定である。

再生医療受託サービスで再生医療をサポート

▲CPC

セルシードは2018年2月より再生医療受託サービスを開始。再生医療の研究開発や事業化支援のために総合的にサポートする。具体的には三つのサービスがある。

サービスの一つは、UpCell®を用いた細胞シート製品の製法開発と製造受託である。自社内に特定細胞加工物製造許可(施設番号FA3160008)を取得した延べ床面積約763㎡の細胞培養センターを設け、4つの独立した細胞操作室がある。日本再生医療学会認定の臨床培養士等、細胞培養の経験豊富なスタッフが所属。センターは24時間自動モニタリングシステムにより清浄度・室圧・温湿度・機器の稼働状況等を監視。

第二のサービスは、施設管理・申請支援だ。「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」では、細胞培養加工施設ごとに厚生労働大臣に届出・許可申請が義務づけられている。関連資料の作成には膨大な時間がかかるが、セルシードでは文書作成の支援やコンサルティングを実施することで研究者を支援する。クライアント先の細胞培養加工施設の施設設備や管理体制も支援することで、研究者が研究や治療に多くの時間をかけられるようサポートする。これまで食道再生上皮シートなどの製品化に向けて取り組んできたセルシードの強みと言える。

第三のサービスは細胞培養技術者教育である。細胞シート作製の未経験者などを対象に、細胞培養センターで細胞シートの作製や剥離などのトレーニングを実施する体制を整えている。自社内に広い細胞培養センターを持ち、長い開発の歴史を持つセルシードならではのサービスだ。ブースではこれら再生医療受託サービスについても紹介する。

 

細胞シート作製用の温度応答性細胞培養器材

セルシードの独自の製品である、温度によって細胞との接着度が変化する温度応答性細胞培養器材。この器材の表面には温度応答性ポリマーが固定化されている。このポリマーは、温度が32℃以上では疎水性の性質を持ち、32℃未満では親水性の性質を持つ。これにより、細胞を37℃で培養しコンフルエントになったことを確認後、温度を20~25℃にして10~30分程度処理するだけで細胞をシート状に回収できる。この際、トリプシン等の酵素処理は不要であるため、細胞シートは細胞外マトリックスを保持した状態で移植、あるいは細胞シートをさらに重ねる3D組織培養が可能だ。適用細胞種は、線維芽細胞、間葉系幹細胞、筋芽細胞、角膜上皮細胞、口腔粘膜細胞、破骨細胞など、多岐に渡る。

セルシードでは、細胞シート回収用温度応答性細胞培養器材のUpCell®、回収用の支持体であるCellShifter™を販売している。これらと特殊ピンセット等がセットになった練習キットも用意されており、未経験者でも気軽に試すことができる。また、器材表面には特殊な加工溝を施し、シングルセルまたはコロニー状で細胞を回収できるRepCell™も取り扱う。マクロファージや成熟樹状細胞の回収、あるいはフローサイトメトリー用の細胞回収に最適である。

他に、超低付着性細胞培養器材であるHydroCell™を取り扱う。HydroCell™は器材全面に超親水性ポリマーが固定されており、マクロファージの培養や、ES細胞やiPS細胞の胚葉体やがん細胞などのスフィア形成等に向いている。また、細胞層の経上皮/内皮電気抵抗値(TER)をリアルタイムモニタリング可能な測定機器であるcellZscopeなども取り扱っている。ブースではこれらの製品を展示する。

細胞シート工学の世界のプラットフォーマーに向けて動き出す

▲台湾調印式

国内だけでなく、海外展開に向けた動きも活発だ。2017年4月、台湾のMetaTech社と食道再生上皮シートと軟骨再生シートの再生医療事業に関する事業提携契約を締結。台湾での独占的な開発、製造、販売権を付与した。総額約12億5000万円の売上を予定しているが、2018年中に約10億円を受領できる見込みである。これを機にアジア諸国や欧米をターゲットに海外事業提携先の獲得を視野に入れている。特に食道再生上皮シートの販売承認を取得するタイミングで大きく踏み出したいとのこと。

これまでに培ったノウハウを活かし、細胞シート工学のプラットフォーマーを目指す。

取材・文:GH株式会社 島田