【中外製薬が誇る製造技術の高さと個別化医療】

小間番号: C-40 / PTR-01

中外製薬がロシュ・グループの一員となってから16年。当時は社内外から驚きだけでなく懐疑的な意見もあったようだが、現在までに時価総額は約9倍にまで成長した。「ロシュ・グループの一員」という言葉から受ける印象とは異なり、独自のビジネスモデルを展開して海外でも存在感を見せつつある中外製薬。躍動の原動力となっているのは、強みとなっている研究・開発・製造技術だ。2017年時点におけるパイプラインプロジェクト数は41件と、国内でも屈指の数値を誇る。ロシュ・グループがもつ海外のネットワークも駆使して、革新的な製品を世界に届け、さらに個別化医療にも取り組んでいる。

技術革新を続けてアンメットメディカルニーズを満たす

中外製薬は2017年12月、新たなキャッチコピーとして、「バイオでしか、行けない未来がある。」を策定した。これは、今後も抗体医薬品を始めとするバイオ技術を活用しながら常に技術革新を起こし続け、新たな技術でアンメットメディカルニーズに応えようとする現れだ。国内の研究開発パートナーと連携して新薬を創出し、それをロシュ・グループがもつネットワークで世界中の患者に届けることを目指す。

中外製薬は、パートナーとの連携の第一歩として、BioJapanのようなイベントでの意見交換を重視している。BioJapanでおこなわれるようなマッチングシステムによって新たなネットワークが生まれ、次のビジネスにつながったというケースは毎年あるという。様々な研究機関や企業の関係者が一堂に会する同イベントは、新しい技術をキャッチアップするのに最適であると考え、定期的に会合することで、お互いにプロジェクトの進捗状況などを確認するベンチマーキングの場としても活用している。

中外製薬のブースでは、このような意見交換をするためのドアオープナーとしてバリスタがいれるコーヒーを用意するという。コーヒーを片手にリラックスした状態でディスカッションすることでふとしたアイデアが湧き出て、そこから意外なイノベーションにつながるかもしれない。来場者と中外製薬がお互いにもつアイデアや知恵を交換し、新たなビジネスチャンスが生まれるオープンイノベーションの場となることに期待したい。

次に、中外製薬がブースで展示する主な内容を二つ紹介する。高い創薬技術力・生産技術と、今年から本格的に参入する個別化医療だ。

高い創薬技術力・生産技術で早期商業化を実現

中外製薬では、その高い技術力を象徴する抗体医薬品が血液凝固第VIII因子に対するインヒビター保有血友病Aを対象とする出血傾向抑制薬として2017年に米国で承認を取得し、世界に先駆けて販売。2018年3月には本邦でも承認され、5月発売に至った。欧州においても承認を取得している。

開発に使われた技術が「バイスペシフィック(二重特異性)抗体技術」だ。通常の抗体の標的分子は1種類だが、バイスペシフィック抗体は2種類の標的分子と同時に結合できる。新しい抗体医薬品は第IX因子と第X因子に同時に結合することで、第VIII因子と同様の機能を発揮する。

バイスペシフィック抗体は基礎研究レベルでは注目されていたものの、その構造が複雑であるため、高純度・高効率での製造は困難とされてきた。しかし中外製薬は、独自の抗体改変技術を活用することで量産化に成功。血友病A治療に革命をもたらす医薬品が誕生したのである。

バイスペシフィック抗体技術を適用した第2弾のプロジェクトとして、抗悪性腫瘍剤であるERY974の第I相海外臨床試験が実施されている。ERY974は、T細胞とがん細胞それぞれに発現する別のタンパク質に結合することで、T細胞をがん細胞に誘導。T細胞が、隣接するがん細胞を傷害できるようにしたものである。

このように、バイスペシフィック抗体は単に2剤の効果を1剤で発揮するだけでなく、従来にはない機序による疾患治療も期待できる。着想段階あるいは基礎研究段階のものであっても、中外製薬がもつ技術によって実用化につながるかもしれない。ブースでは、バイスペシフィック抗体技術を始めとする独自の抗体技術を紹介する予定だ。

また、医薬品を患者に届けるためには、研究開発だけでなく生産体制も強固なものでなくてはならない。中外製薬では「高速上市と複数同時開発」の実現を目標に掲げ、生産機能向上にも注力している。特に浮間工場では、これまで初期開発用治療薬を供給する2つのプラントに加え、後期開発から初期商用生産を担うプラントが新設された。新プラントでは2製品の同時生産が可能であり、改変抗体の新薬候補を従来にないスピードで共有できる体制となっている。新プラントは間もなく稼働する予定だ。

個別化医療へ参入

2018年に中外製薬が本格的に取り組む事業の一つが、がんゲノム医療を通じた個別化医療である。ロシュ・グループの一社であるFoundation Medicine社(FMI)はがん関連遺伝子の解析に関するモレキュラーインフォメーションプラットフォームに強みを有している。そのうち、「FoundationOne CDx™(海外製品名)」は、次世代シーケンサーを用いて324のがん関連遺伝子を一括検出し、コンパニオン診断薬機能や遺伝子プロファイリングを通じた診断を行うものだ。2017年11月には、米国食品医薬品局(FDA)より固形がんの網羅的遺伝子解析プロファイリング情報を提供する検査として始めて承認された。また、FDAとの並行審査を受け、CMS(Center of Medicare and Medicaid Service)からの償還を受けている。中外製薬は2018年3月、同検査の国内展開に向けた製造販売承認申請を厚生労働省に行った。より効果的な抗がん剤治療を実現し、医薬品事業とのシナジー効果を目指す。

このように、ロシュ・グループの一員だからこそ、海外にもつネットワークを活用できる強みがある。ロシュの医薬品やサービスを日本に導入できるだけでなく、中外製薬が創出したものを海外で販売できるメリットがある。独自のビジネスモデルを活用し、世界のアンメットメディカルニーズに対応するため、日本から新薬を次々に創出したいと意気込んでいる。

取材・文:GH株式会社 島田