【京都大学iPS細胞研究所、iPS細胞研究のアップデートを通じて新たなアプローチを目指す】

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▲iPS細胞研究所 研究棟外観

京都大学iPS細胞研究所(以下「CiRA」)は、iPS細胞を主なツールとして、新たな生命科学の分野を切り拓く基礎的研究、創薬研究、再生医療の臨床応用に向けた研究および臨床応用の支援を行っている。今回は、京都大学医学部附属病院臨床研究総合センターおよびiPSアカデミアジャパン株式会社と共同出展する。前者は新たな医療開発および臨床試験等に関する研究・開発、医薬品等の治験・臨床試験ならびに臨床データの収集・解析に関する事業等を、後者は共同研究に必要なiPS細胞関連特許に関するライセンス導入・導出を行う。iPS細胞の医療応用には産学連携が不可欠と考えており、革新的治療法開発のための研究・事業開発に挑戦するパートナーを国内外から募集する。

iPS細胞を使った再生医療は治験・臨床研究の段階へ

▲線維芽細胞から樹立したヒトiPS細胞のコロニー(集合体)(コロニーの横幅は実寸約0.5ミリメートル)

iPS細胞を使う再生医療では、iPS細胞がもつ多分化能を利用して様々な細胞を作り出し、病気や怪我などによって失われた機能を回復させることを目的にしている。今年に入ってから治験や臨床研究に関する動きが盛んだ。

2018年8月には、京都大学医学部附属病院臨床研究総合センターの協力のもと、「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験」を開始した。この治験では、後述する再生医療用iPS細胞ストックから提供されたiPS細胞を用いる他家移植が行われる。目的は、移植による安全性と有効性、さらに免疫抑制剤であるタクロリムスを使用したときの安全性と有効性を評価することだ。

また、「血小板減少症に対するiPS細胞由来血小板の自己輸血に関する臨床研究」が2018年9月に厚生労働省再生医療等評価部会で了承され、1年以内の開始を予定している。この臨床試験では、患者自身の末梢血単核球から作製されたiPS細胞由来の血小板を投与し、iPS細胞由来血小板製剤の安全性を評価する。今回は自家移植だが、将来的には再生医療用iPS細胞ストックから血小板を作製して多くの患者に届ける環境を整えたいとしている。

iPS細胞を使った疾患の機序解明と創薬研究

▲iPS細胞研究棟内4階のオープンラボの様子

難治性疾患の患者の体細胞からiPS細胞を作り、それを神経、心筋、肝臓、膵臓などの患部の細胞に分化させ、その患部の状態や機能を解析して疾患の原因解明を目指す研究も行われている。例えば、脳内にある神経細胞が変化して起こる病気は、外側からアクセスすることが難しく、また変化が進んでしまった細胞からは、正常な状態がどうであったかを推測することが難しいとされてきた。iPS細胞を用いることで、こうした研究が飛躍的に進む可能性がある。また、分化した変異細胞を利用すれば薬剤スクリーニングが可能となり、新薬開発が大いに進むと期待されている。

2017年8月には、京都大学医学部附属病院臨床研究総合センターの協力のもと、進行性骨化性線維異形成症(FOP)に対する医師主導治験を開始した。この治験は、すでに免疫抑制剤として使用されているシロリムス(ラパマイシン)が異所性骨化を抑制するメカニズムを解明したことに基づいている。

また、アルツハイマー病患者由来のiPS細胞から作製した大脳皮質神経細胞を用いて、アルツハイマー病の原因物質と考えられるアミロイドベータを低減させる3種類の既存薬の組み合わせが同定された。

これらは、既存薬を別の疾患に応用する「ドラッグ・リポジショニング」とよばれており、近年注目されているアプローチだ。

再生医療用iPS細胞ストックも本格稼働中

再生医療用iPS細胞ストックプロジェクトは、他家移植のためのiPS細胞を保存し、必要に応じて提供できる体制を構築するものである。まず、ヒト白血球型抗原(HLA)型を免疫拒絶反応が起きにくい組み合わせでもつ健康なボランティアから細胞を採取し、医療用のiPS細胞を作製する。安全性や品質が確認されたiPS細胞は保存され、医療機関や研究機関に迅速に提供される。自家移植と比べ、時間も費用も格段に抑えられると期待されている。

これらのiPS細胞の作製、保存は、CiRAに設置された細胞調製施設(FiT:Facility for iPS Cell Therapy)が行っている。2015年からはiPS細胞の研究機関や製薬企業への提供を開始し、様々な疾患を対象にiPS細胞ストックを用いた再生医療研究が進められている。

新たなアプローチで疾患の解明と治療を目指す共同研究先を求める

開催初日のオープンステージセミナーでは、CiRA所長室室長の河村透氏が登壇し、CiRAによるiPS細胞の医療応用への戦略的な推進分野等の紹介のほか、iPSアカデミアジャパン株式会社と京都大学医学部附属病院臨床研究総合センターの取り組みを紹介する。

ブースでは、iPS細胞の特徴から、治験などのフェーズに進んでいる最新の研究状況を中心に紹介する。iPS細胞の研究や他機関との連携の現状を紹介しながら、稀少疾患や難治性疾患などに対して新たな切り口でアプローチできる研究機関や企業を探したいとしている。

取材・文:GH株式会社 島田