【産官学に開かれた湘南アイパークでヘルスイノベーション創出を目指す】

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2018年4月13日、神奈川県藤沢市で「湘南ヘルスイノベーションパーク」(以下「湘南アイパーク」)がグランドオープンした。湘南アイパークでは、ライフサイエンスに携わるスタートアップ企業、大学、政府・自治体のパートナーが集まり、ヘルスイノベーションのハブとなることを目標にしている。現在は25の企業・研究機関が入居しているが、2023年までに200社が集まり、入居パートナー全体で共に ヘルスイノベーションに実現を目指すため、今回のBioJapanで中長期戦略を発表した。

産官学からの入居パートナーとともにオープンイノベーションを加速させる

湘南アイパークの構想は、世界のサイエンスパークを分析し、湘南アイパークのあり方を研究した結果導かれたものである。例えば、アメリカにある主なサイエンスパークには、ボストン、サンフランシスコ・ベイエリア、サンディエゴとあり、これらが現在に至るまで発展している理由には2つの共通点がある。それは、「アンカーテナント(核)があること」「内部の結びつきに多様性があること」である。そこで、製薬企業をアンカーテナントとしたエコシステムをつくるためにオープンされたのが湘南アイパークである。スタートアップ企業がもつスピード感、大学などの研究機関がもつ新しい発想、製薬企業がこれまで培ってきた創薬ノウハウが一つの場に集約することになる。多様なバックグラウンドをもつプレーヤーが有機的に連携し、多様性の中からイノベーションを生み出すことが狙いだ。さらに、神奈川県をはじめとする自治体とも積極的に連携することで、ライフサイエンスにおける最先端技術・知見を活用したアイデアの創出・実現を可能とするオープンイノベーションを産官学で加速させたいとしている。4月のグランドオープンの開所式典の出席者およそ350名には、神奈川県の黒岩知事だけでなく京都大学関係者、医療機関関係者、厚生労働省、文部科学省、経済産業省、内閣官房関係者が含まれていることからも、産官学連携の本気度がうかがえる。国内のみならず、世界規模の人材と投資を呼び込み、日本初の製薬企業主導によるヘルスイノベーション創出の一大拠点を目指す。

中長期戦略を象徴する3つのキーフレーズ

湘南アイパークの中長期戦略が11日のランチョンセミナーにて発表された。キーフレーズは以下の3つである。

第1に掲げるライフサイエンスにおける重大な社会問題とは、特に再生医療、稀少疾患、認知症、未病の4分野を指す。

再生医療の分野では、武田薬品工業とCiRAの共同研究プロジェクトT-CiRAがすでに進行している。一方で神奈川県と共同で再生医療実用化に向けたMap作りもすすめ、12日の神奈川県ランチョンセミナーで公表した。(湘南アイパークのHP上で公開)

稀少疾患については、患者数が少なく、研究するためのデータがそもそも十分ではない現状がある。そこで第一に、患者データを収集することが求められている。湘南アイパークが希少疾病の研究開発のプラットフォームとなり、患者データ、それを解析して診断法や治療法の開発につなげる人材が集約する場となることを目指す。

認知症は高齢化に伴って患者数が急増しており、もはや重大な社会問題でもある。病態解明は当然のこと、創薬などの薬学的アプローチだけでなく、病態の進行を遅らせる心理学的アプローチや介護する家族も視野に入れた包括的なケアに取り組む。

未病は近年注目されている概念であり、将来膨れ上がる医療費の抑制につながると期待されている。神奈川県は未病の概念そのものを提唱した自治体である。その県の支援の下、地元藤沢市、鎌倉市の協力を仰ぎながら湘南会議を設立し、民間企業群によるヘルスケア技術・サービスの向上と普及に努める。

以上の分野の研究では、膨大なデータの収集と解析が欠かせない。そこで、第2に掲げる「ヘルスケアとIT技術の融合を実現する場」として、ビッグデータ・画像データ解析技術を活用し、医療やヘルスケアの分野でイノベーションを起こしたいとしている。また、IoTや遠隔医療など、インターネットを最大限活用する新たな取り組みも目指す。

同時に、第3に挙げた「創薬プラットフォームを拡充し、次世代研究を加速させる場」として、創薬プラットフォームの構築、創薬技術を他業界へ横展開、他業界のベストプラクティスの応用を掲げた。

4つの社会課題を解決する意欲に溢れた関係者が集い、研究が推進するために

湘南アイパークでは、incubate(醸成)、collaborate(協力)、accelerate(加速)、development(発展)の4つの具体的要素でヘルスイノベーション創出を目指す。

まず、incubate(醸成)では、スタートアップ企業をサポートするため、サイエンスメンターをつけて経営戦略・資金調達などのアドバイスを行う。合わせて、スタートアップ企業同士やベンチャーキャピタルとのネットワーク形成の促進、起業トレーニングの講習、薬事・知的財産の相談の場なども提供する。そして、産官学の組織がcollaborate(協力)し、研究をaccelerate(加速)させるのが狙いだ。さらに、湘南という地域に愛される場にもなることで、医療・ヘルスケア業界だけでなく地域のdevelopment(発展)にも貢献したいとしている。夏休みの小学生を招いて親子科学教室を開催したり、毎週土日・祝日には一部敷地を開放したりするなどして、多くの住民が気軽に訪れる空間となることも目指している。

BioJapan当日のブースでは、「湘南アイパークの未来」をテーマとして、今後入居を検討している方々に対して施設の概要や具体的に入居いただきたい企業(像)が紹介された。中立性、公共性を高め、2023年までに200社の入居が目標だ。多様な人材や組織が集まることで、研究者一人一人が刺激を受け、自らの研究が推進するきっかけにしてほしいとしている。

取材・文:GH株式会社 島田